医療機関の「法人スキーム」:複数法人を組み合わせる戦略
「医療法人だけでは限界がある。かといってMS法人を作るだけで本当にいいのか?」 経営が軌道に乗った院長先生が行き着く悩みは、「組織全体の構造設計(スキーム)」であることがあります。
日本の医療制度において、医師が展開できる事業は典型的には「医療法」の適用下にあります。しかしながら、複数の法人格を適材適所で組み合わせることで、法務リスクを最小化しながら、収益と資産形成を最大化するという方向性を目指すことも可能です。
本記事では、医療機関の「多角的法人スキーム」について、簡単にご説明いたします。
なぜ「単体」ではなく「複数法人」なのか?
医療法人一択の経営には、以下の3つのリスクが常に付きまといます。
- 事業停滞リスク: 万が一、医療法人の分院化のための定款変更手続等がスムーズに進まなかったり等すると、医療法人に関するすべての事業が連動して停滞してしまう。
- 資産固定リスク: 利益が医療法人内に貯まり続けても、医療法人の業務範囲が医療法において厳格に制限されている以上、内部留保された利益が円滑に使用できず、解散時や承継時に個人に利益を還流させることも困難。
- 機動力の欠如: 分院化等による事業展開や合併等のM&Aをする際、都道府県(知事)の認可を待つ必要があり、時間がかかる。
これらを解決するのが、「法人スキームの多層化」です。
「3つの法人スキーム」モデル
医師の先生のビジョンや現在のフェーズに合わせて、以下の3つのモデルが典型的なものとして挙げられるように思います(モデル名は、便宜的に付しております。)。
モデルA:【標準型】医療法人 + MS法人(株式会社)
- 構造:診療は医療法人、事務・不動産管理・サプリ販売はMS法人。
- 目的:所得の分散、経費の適正化、親族への報酬支払い。
- ポイント:業務委託契約書等を整え、税務調査での「否認リスク」を減らします。
モデルB:【アカデミック型】医療法人 + 一般社団法人
- 構造:診療は医療法人、独自の治療メソッドの教育・セミナー・認定医制度の運営は一般社団法人。
- 目的:知的財産の保護、公的な信頼の維持、全国展開。
- ポイント:「非営利性」を強調することで、学会や研究会としての公的な信頼を獲得しやすくなります。
モデルC:【多角化完成型】医療法人 + MS法人 + 一般社団法人
- 構造:「医業(医療法人)」「営利・資産形成(MS法人)」「公益・教育(一般社団法人)」の3つを併用。
- 目的:事業の完全分離と、全方位的な収益構造の構築。
- ポイント:大規模な医療グループや、独自の診療技術を持つ方に適しています。
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スキーム構築における「三位一体」のリーガルチェック
複数の法人を組み合わせる際、注意すべきは「実態のない利益移転」とみなされることです。以下の3点が主にポイントになろうかと思います。
- 実態の証明(エビデンス): 実態が存在するのは当然として、法人間で動くお金に対し、「何の対価か」を証明する報告書、議事録、成果物等を準備します。
- 契約の網羅性: 「業務委託契約」「ライセンス契約」「賃貸借契約」「出向契約」など、法人間の法的な繋がりをすべて書面化します。
- ガバナンスの整合性: 各法人の役員構成をどう配置するか。利益相反取引の承認プロセスをどう構築する等を定款レベルで設計します。
まとめ
「とりあえず法人を作ってみた」という段階から、「戦略的に法人を使い分ける」段階へ。
当事務所では、複雑に絡み合う医療法・一般社団法人法・会社法・租税法等の糸を解きほぐし、先生にとって最も効率的な「オーダーメイド・法人スキーム」を提案します。

