MS法人(メディカルサービス法人)とは?設立のメリットと注意点
「節税のためにMS法人を作りたい」という相談は多いですが、「器」を作るだけでは意味がないように思います。
MS法人は、医療法人の業務範囲の制約を補完し、、事業の多角化、所得の分散、相続・事業承継対策といった複数のメリットを生かすための「戦略的パートナー」であるべきです。
本記事では、MS法人の設立を検討している理事長や院長先生に向けて、株式会社と合同会社の選択、事業目的の定め方、そして設立後に陥りやすい「実体なし」と判断されないための方法をを簡単に解説します。
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MS法人の形態:株式会社か、合同会社か?
MS法人を設立する際、まず迷われるのが「会社形態」です。結論から言えば、「対外的なブランディング重視なら株式会社」「コストと身内経営重視なら合同会社」という選択になります。
- 株式会社:
- メリット:社会的信用度が高い。将来的に親族以外から出資を受ける可能性がある場合に適している。
- デメリット:設立費用(登録免許税等)が約20万円〜と多少高額。役員の任期があり、定期的な重任登記が必要。
- 合同会社(LLC):
- メリット:設立費用が約10万円〜と安価。役員の任期がなく、定款で配当を自由に決められる。
- デメリット:株式会社に比べると認知度が低い(ただし、身内経営のMS法人では主流になりつつあります)。
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MS法人の「事業目的」に何を書くべきか?
MS法人の登記簿に記載する「事業目的」は、将来の拡張性を見据えて慎重に設計する必要があります。医療法人の本来業務や附帯業務(医療法42条)との棲み分けを明確にするのも一つの方法かと思います。
<推奨される事業目的の例>
- 医療機関の経営コンサルティング業務: 事業戦略やマーケティングの立案。
- 医療事務、受付業務の受託: 人件費の適切な付け替え。
- 医療用具、医薬品、サプリメントの販売: 卸売や物販。
- 不動産の賃貸および管理: クリニック建物の所有。
- 広告宣伝の企画・制作: ホームページ運営やSNS運用。
【重要】 「診療所の経営」と書いてはいけません(というより、できません。)。診療所の開設主体はあくまで医療法人、一般社団法人や個人医師である必要があり、MS法人が診療所の経営や支配を行うことは医療法上できないとされているからです。
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MS法人を設立する最大のメリット「所得の分散」と「事業の多角化」
MS法人のメリットは複数存在しますが、中でも重要なのは、個人開設の診療所や医療法人・一般社団法人の利益を、業務委託費や家賃等の適正な対価を通じてMS法人に移転することにより、所得を分散させたり節税を図ることができる点にあります。
例えば、超過累進税率が適用され最高45%にも達する個人の所得税に対し、法人税率は一定の所得以下であれば軽減税率が適用されるなど、税率の差異を利用した節税効果を期待できます。また、医師でないことから医療法人の理事長になれない理事長の家族をMS法人の役員に就任させ、適正な役員報酬を支払うことで、一族全体での所得分散を図りつつ経済的利益を確保(世帯収入の最大化)することもある程度可能となります(所得の分散)。
次に、医療法人は原則として不動産賃貸業や一般的な物品販売業等を営むことはできませんが、MS法人を設立することにより、医療法人が所有できない転用可能な不動産を取得して外部に賃貸することや、患者や職員以外も利用可能な外部向けの売店・食堂の運営、コンタクトレンズやサプリメント等の販売・通信販売、さらには介護サービス事業などを適法に実施することが可能となります(事業の多角化)。
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運用上の「3つの落とし穴」:弁護士が教える防衛策
設立後に最も注意すべきは、税務署や都道府県等の行政機関から「このMS法人は実態がない(形だけの節税対策だ)」と判定されることかと思われます。
① 「適正価格」の維持
医療法人からMS法人に支払う委託料が、相場より著しく高い場合、それは「不当な利益移転」とみなされます。
- 賃料であれば、近隣の相場。
- 事務委託なら、派遣社員を雇った場合のコスト+α。
これらを論理的に説明できるエビデンス(算定根拠)を用意しておく必要があるでしょう。
② 契約書の完備
「自分一人のグループだから」と、契約書を作らずに送金しているケースが多々あります。 医療法人とMS法人の間には、必ず「業務委託契約書」や「賃貸借契約書」等を締結してください。 弁護士によるリーガルチェックを受けた契約書があることが、ガバナンスが効いている証拠となります。
③ 業務実態の証跡(エビデンス)
MS法人が「コンサルティング」を行っているなら、月次のレポートや会議議事録を残してください。「清掃」を行っているなら、作業記録を残してください。このように業務の実態が存在するのは当然の前提として、それを書類上の契約だけでなく、「実際に動いていること」を証明できるようにしておくのが、行政機関から指摘が入った際に適切に対応するための方法税務署や行政機関です。
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MS法人は「攻め」の道具
MS法人は単なる節税ツールではありません。 事業の多角化による事業の拡大という、先生のビジネスアイデアを形にするための重要な器となります。
当事務所では、MS法人の設立から、医療法人との間の契約設計、利益相反の回避まで、「適法なグループ経営」を法務面からバックアップいたします。 「これから設立したい」という先生も、「今のMS法人の運営が不安だ」という先生も、ぜひ専門家の知見をご活用ください。

