Marunouchi Soleil Law Office
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弁護士による病院・クリニックのための法律相談

Consultation / Solution cases相談・解決事例

医療法人の従業員に対する誹謗中傷記事の削除事例

依頼者の属性

業種:医療法人
規模:クリニックを一か所運営
相談者:理事長

弁護士への依頼背景

医療法人の理事長が、Googleマップ上の当該医療法人の口コミ欄に、医療法人に所属する従業員を名指しで「パワハラをしている」などと誹謗中傷する記事が投稿されていることを発見しました。投稿自体は一つだったものの、投稿された内容は全く事実無根であったのみならず、個人名(正確には名字)まで記載されていたため、投稿を削除できないかとのご相談をいただきました。

解決までの流れ

まず、発信者情報開示仮処分命令申立てや投稿記事削除仮処分命令申立てといった裁判上の保全手続を用いる方法やGoogleフォームからの削除を要求する方法等、複数の手段があることをご案内しました。その後、発信者情報開示仮処分命令申立て・投稿削除請求仮処分命令申立てを行う方向で案件を受任することとなりました。案件を受任してからは、従業員を誹謗中傷した内容の投稿記事の削除が認められた裁判例の調査を行いました。それと同時にGoogleマップ上の投稿記事の記載内容は、いわゆるパワハラに関するものであったため、クリニックで勤務する他の職員に対して弁護士から事情聴取を行い、事実関係の確認を行いました。ヒアリングの結果、口コミで名指しされた従業員によるパワハラを疑うべき事実はなく、投稿記事の内容が事実無根であることが確認できました。このことを示す証拠として、従業員の陳述書を作成し、提出しています。しかし、本件においては、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、アメリカのGoogle本社への申立書の送達に用いられるEMSの停止や裁判所における期日延期といった事態が生じ、発信者情報開示仮処分申立ての手続中に、ログの保存期間が経過しログが消滅してしまったことから(Googleマップ上の口コミ欄に対する投稿記事のログは最短で約3ヶ月程度しか保存されないと言われています。)、結果的にこの申立ては取り下げざるを得ませんでした。一方の投稿記事削除仮処分命令申立てについては、約1年間案件が係属し、裁判所の判断が下されるのを待っている状況でした。

その間に、弁護士の方で別途行っていたGoogleのフォームからの削除要請が効を奏し、問題となっていた投稿記事を削除することができました。これによって、本件は無事に解決することができました。

解決のポイント

Googleフォームの利用規約の中には、内部者からの書き込みを禁止するものが存在します。本件においては、弁護士が職員の方々へヒアリングを継続していく過程において、口コミにおいて、名指しで誹謗中傷された従業員の業務内容は、医療法人内部の管理監督業務が多く、患者を含め医療法人外の取引先と関わる機会がほぼないことが明らかになりました。そのため、問題となっていた投稿記事の投稿者は医療法人の内部状況を知ることができる退職者の可能性が極めて高いとの結論に達しました。以上の内容をGoogleフォームからの削除要求にて主張したところ、問題となっている投稿記事は削除されました。Googleフォームからの投稿記事の削除要求は、認められないことも多いとはいえ、削除要求の記載を工夫することによって、削除が認められる場合があります(その場合は、最短で約5日程度で投稿記事が削除されることもあります。)。Googleフォームからの削除要求の記載の仕方は、専門的な知識が要求されます。当事務所の所属弁護士は、以前にもGoogleフォームを用いた削除要求により投稿記事(星一つのみで記事がない投稿も含みます。)を複数回削除した経験をもつため、その経験が本件の解決に繋がったのではないかと思います。

解決までの期間

約1年

事案総評

近時、インターネット上の口コミ欄において、医療従事者に対する誹謗中傷を内容とする投稿記事が増えています。その中には、医師や看護師の個人名を明記し、事実無根の内容が投稿されているものや、医療機関での受診を前提とした体験記事とはおよそいえない悪質なケース(同一人による別アカウントでの連続誹謗中傷投稿や星一つのみの連続投稿等)も見受けられるところです。その影響は大きく、内容に誹謗中傷を含む投稿記事が原因となって心身を害してしまわれた医療従事者の方も存在します。当事務所にも、Googleマップ上の口コミ欄に名指しで事実無根の内容が書かれたことがある弁護士がおり、その際は、色々な手法を試し、問題となった投稿記事を削除した経験がございます。そのため、投稿記事への対処法のみならず、口コミ欄に事実と反する内容の投稿をされてしまった方々の心情も十分に理解できるところです。

医療機関に対する口コミ欄への投稿記事は、いわゆる医療広告ガイドラインの趣旨を根拠に、患者の体験談は医療機関の選択に資する情報であるという観点から、削除を否定する論調も存在するところであり、投稿記事を削除する際には医療広告ガイドラインを始めとした医療機関特有の事情も理解している必要があります。口コミ対策は、ログの保有期間との関係で早期の投稿記事発見とご相談が重要です。インターネット上の口コミ欄における誹謗中傷を内容とする投稿記事の書き込みでお困りの方は、当事務所にご相談ください。

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