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弁護士による病院・クリニックのための法律相談

Medical
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医療法関連コラム

患者の体験談

1 はじめに

「この病院で、この治療をしたらすぐに治りました。」

このような患者の体験談を目にしたら、自らの医療機関の宣伝に使用したい、そのように考えたことはないでしょうか。しかし、患者等の主観に基づく治療等の内容又は効果に関する体験談は、広告禁止事項のため、注意が必要です。

2 医療広告規制

医療等に関する広告は、医療法、その他関連法令、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」(平成30年5月8日付。)などの通達等により規制され、広告可能事項は限定されています。

そして、患者の体験談については、医療法施行規則第1条の9第1号において、患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告をしてはならないと定められています。

3 なぜ患者の体験談は広告禁止事項なのか

医療に関する事項については、患者等が誤った情報に基づき選択した場合、他の分野に比べてその被害が大きくなる可能性が高いこと、また専門的知識を持たない患者等が実際の治療内容・効果等を適切に判断することは難しいことから、正確な情報が提供された状態で選択することを阻害してはならないと考えられています。

しかし、個々の患者の主観的な体験談は、その患者自身が治療を受けたときの状態等により、その内容は当然異なります。その体験談を見たり聞いたりした者が、治療内容や効果を誤認し、過大に期待することがないとも限りません。

このように、患者等が治療の効果等を誤った認識のもとで選択することを防ぐために、患者の体験談は広告禁止事項と定められています。

4 口コミサイトの体験談

医療機関の口コミサイトにある患者の体験談は、禁止されるのでしょうか。

結論として、特定の医療機関に対する誘因性(患者の受診を誘引する意図があること)の有無によって、規制対象として禁止される場合も、禁止されない場合もあります。

一般的に、患者個人が、医療機関からの影響や依頼を受けずに体験談を述べるにとどまる場合は、誘因性は生じないと解されています。他方で、医療機関が広告料等の費用を負担し、掲載を依頼している場合や、医療機関が肯定的な体験談を優先的に表示し、否定的な体験談を削除するなど口コミサイトの編集をしている場合には、誘因性が肯定され、患者の体験談を掲載することは禁止されます。

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