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医療法関連コラム

近時の医療広告に対する規律について

1. はじめに

近時、ウェブサイトにおける医療機関等の広告のあり方について、相談を受けることがあります。近頃の法改正により、医療機関等の広告規制は従前とは変化したため、医療機関関係者の方々も何をどこまで広告して良いのか分からず、結果として思わぬ行政指導や風評被害等を受けてしまうという事例もございます。
そこで、以下では、医療法等の観点から、医療機関等の広告規制のあり方について説明します。

2. 医療広告規制に関する法律等

医療法は、医療広告のあり方について規制し、医療法の委任を受けた医療法施行規則や医療法施行令がその内容をより詳細に規定しています。
また、厚生労働省によって通知された医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」(平成30年5月8日付。以下「新医療広告ガイドライン」といいます。)や、医療広告ガイドラインに関するQ&A」(平成30年8月付)においても、行政による医療広告規制の内容が示されています(これらの関連法令をまとめて、以下「医療広告関連法令」といいます。)。したがって、医療機関等に関する広告を行う場合には、医療広告関連法令を確認する必要がありますし、場合によっては、広告を行う前に当局(都道府県、市の保健所等)に確認をとるべきです。

3. 医療広告関連法令の適用対象と効果

医療広告関連法令の対象ですが、医療法第6条の5第1項が「何人も」と規制していることから、医療広告に関する規制を受けるのは医師、歯科医師、病院といった医療機関に限られません。例えば、医療機関から依頼を受けた広告代理店、アフィリエイター、いわゆるメディカルサービス法人(以下「MS法人」といいます。)が医療に関する広告を行った場合においても、医療法上の広告規制は及びます。したがって、アフィリエイターやMS法人が医療機関からの依頼に基づいて広告を掲載する際には、広告内容が法令に照らして適切な表現となっているかを精査する必要があります。

医療広告規制に違反した場合の効果ですが、医療法上は6月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。つまり、刑事罰を科される危険があるわけです。
もっとも、広告規制に違反しても即時に刑罰が科されることはめったになく、まずは、厚生労働省医政局総務課から注意喚起がなされ、それでも違反が是正されなかったような場合に刑罰が科されることになるのが通常です。

4. 医療広告の要件

医療機関が患者に対し発信する表現が全て医療広告に該当するわけではありません。
医療広告と言えるためには、①患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)②医業もしくは歯科医業を提供する者の氏名もしくは名称、または病院もしくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)、という2つの要件を満たす必要があります。
※以前は、この2つの要件に加えて、一般人が認知できる状態にあること(認知性)という要件が必要とされており、ウェブサイトはこの認知性の要件を満たさないことから医療法上の広告規制には服さないとされておりましたが、現在は、認知性の要件は不要とされたため、ウェブサイトも医療法上の広告規制の対象となっています。

5. 広告可能事項について

医療法上、医療広告が可能な事項は限定されており、医師または歯科医師である旨や診療科名等といった事項しか広告はできません。
もっとも、新医療広告ガイドラインによると、ウェブサイトによる広告等についてのみ、例外的に広告可能事項の限定を解除し、法定の広告可能事項以外についても広告が可能となることとしています(逆にいうと、立て看板や院外で配布するチラシといったウェブサイト以外の広告媒体を用いた場合は、そもそも広告可能事項の限定解除ができません。)。

広告可能事項の限定を解除するための要件は、①医療に関する適切な選択に資する情報であって、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること、②表示される情報の内容について、患者等が容易に照会できるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること、③自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること、④自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること――の4つです。※保険診療のみ行っている医療機関の場合は、①と②の2つの要件のみ充足すれば広告可能事項の限定解除は可能となります。

医療機関等が特に広告によって訴求したいと考える治療内容や治療効果は、医療法の定める広告可能事項に含まれていません。したがって、これらについて広告をするには、ウェブサイトにおける広告であり、かつ広告可能事項の限定解除の要件を満たす必要があります。
※この限定解除の要件がウェブサイトによっては満たされてないとして厚生労働省医政局総務課から注意喚起がなされる場合がありますが、その際は、指摘に従い、限定解除の要件を満たすよう、ウェブサイトを修正すべきです。

6. 広告禁止事項について

医療広告関連法令は、広告可能事項の限定とは別に、広告禁止事項を定めています。具体的には、虚偽広告、比較優良広告、誇大広告、公序良俗に反する内容の広告、患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告(以下、体験談の広告)、治療等の内容または効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前または後の写真等の広告、薬機法・景品表示法違反の広告、品位を損ねる内容の広告が禁止されます。これらの広告禁止事項については、広告可能事項の限定を解除したとしても広告することはできない点に注意が必要です。

よく質問があるのが「治療等の内容または効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前または後の写真等の広告」(以下「ビフォー・アフター写真」といいます。)についてです。最近は、クリニックのアカウントで作成されたインスタグラム上の写真においてもよく見られるビフォー・アフター写真ですが、全てのビフォー・アフター写真を用いた広告が違法となるわけではありません。ビフォー・アフター写真に、通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付した場合については、広告が禁止される「治療等の内容または効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前または後の写真等の広告」には当たらず、広告が可能となります。

したがって、ウェブサイト上にビフォー・アフター写真を掲載して広告する場合は、前述した広告可能事項の限定解除の要件を充足した上で(治療効果についての表現であるビフォー・アフター写真は、そもそも医療法上の広告可能事項ではないからです。)、ビフォー・アフター写真の表示部分に、通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付ける(これは、広告可能事項の限定解除の要件③、④と同様。)必要があります。

7. 新たなウェブ上のサービスにおける口コミ

近時は、ウェブサイト上のサービス内容が急速に拡大し、医療広告にあたるのか否かが必ずしも明確でない事項も増えております。
その具体例の一つとして、グーグル社の提供するサービスであるナレッジパネルに付属する口コミ部分や、医療機関ポータルサイトに付属して口コミ部分が、医療広告関連法令が禁止している患者の体験談にあたるのではないかというものがあります。

このような第三者が運営するいわゆる口コミサイト等への体験談が広告に当たるかどうかは、医療広告の要件の一つである「誘引性」の有無で判断されると思われます。例えば、医療機関が患者やその家族に(有償・無償を問わず)肯定的な体験談の投稿を依頼した場合や、体験談の投稿自体を依頼していなくても、ウェブサイトの運営者に対して体験談を医療機関の有利に編集することを依頼しましたり、このような編集をするウェブサイトの運営費を医療機関が負担する場合には、当該体験談に「誘引性」が生じ、広告に該当することになりますが、逆に、これらの事情がなければ「誘引性」が認められず、医療広告には該当しないことになると思われます。

このように、近時のウェブサイト上の新サービスにおいては、医療広告規制が及ぶか否かについて、必ずしも見解が明らかではない事項もあるため、医療機関等がそれらのサービスを利用する際には、特に注意が必要でしょう。

8. 医療広告規制の現状

現在、厚生労働省は、医療広告の監視指導体制の強化のため、ネットパトロール事業を発足させ、事業者に医療広告に関するネットパトロールを行わせているようです。その結果、平成30年4月から9月の間に審査対象となったサイト数は1137件に上り、医療広告規制違反の疑いありとして医療機関に通知がなされたケースは541件に上ります(厚生労働省「医療広告の監視指導体制強化について」参照。)。
また、厚生労働省における「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」の第12回会議(平成30年12月20日付)において、2019年予算措置で「医療広告協議会(仮称)」を設置し、ウェブサイト上の医療広告の監視指導体制を強化することが了承されました(資料2も参照。)。
更に、医療広告規制に関する新医療広告ガイドラインが広く知れ渡った結果、迂闊に医療広告等を行うと、医療機関等が他の医療関係者から新医療広告ガイドライン違反を指摘され、インターネット上で風評被害を受けてしまうという事態も発生しております。

これらのことから、医療広告に対する行政の監視指導体制は今後より厳しくなることが予想され(実際、厚労省から注意喚起を受けた事業者は増えているように思われます。)、医療機関等が医療広告の表現内容によって風評被害を受けることも予想されます。
今後、医療機関等は、このような医療広告規制の動向を注視することが必要です。

 

 

 

 

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