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医療法関連コラム

医療機関と物販

1. はじめに

近時、クリニックを経営する医師の方々から、自らが開発に携わった物をクリニック内で販売したいという相談を受けることがあります。具体的には、美容皮膚科クリニックにおけるハンドクリーム(化粧品)の販売や整形外科クリニックにおけるアーチサポートの販売に関する相談等が挙げられます。
本記事におきましては、医療機関が物販を行う際の法令上の規律について説明いたします。

2. 医療機関の非営利性との関係

前提として、医療法上、医療機関は、非営利でなければならないとされています。医療機関が物販を行う場合、対価として利益を得ることになりますので、医療機関の非営利性に抵触するのではないかという点をまず考えなくてはなりません。

この点につきましては、見解が分かれるところではありますが、医療機関の営利性につき、医療法が直接禁止しているのは、社員に対する剰余金の配当のみですので(医療法54条)、剰余金の配当ではない物販行為と利益の獲得については、医療法が禁止している営利性に抵触するわけではないと考えることも可能であると思われます。しかし、厚生労働省が出している「医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について」(医政総発0330第4号)におきましては、医療機関の非営利性の確認事項として、医療機関による剰余金の配当以外に、医療法人が営利事業を行っているか否かについても言及されておりますので、医療機関の物販行為が非営利性に抵触すると考えることも可能であると思われます。

したがって、医療機関の物販行為が医療機関の非営利性の原則と抵触するか否かは、明確な見解があるわけではないといえるでしょう。

3. 物販が「医業」の範囲といえるか

医療法は、医療機関が行うことのできる行為の範囲を「医業」に限定していると解しえます(医療法第1条の5、42条参照。)。したがって、物販行為が「医業」の範囲に含まれると言うことができれば、物販行為は、医療法に抵触しないと考えることが可能となります。
では、「医業」の範囲とは、どのように解されているのでしょうか?

「医業」の範囲について直接言及された法令はありませんが、医療機関と物販に関する関係法令(サプリメントの販売に関する内閣府規制改革会議健康・医療ワーキング・グループ第17回会議(平成26年2月18日開催)における厚生労働省医政局指導課長発言)内閣府規制改革会議における規制改革に関する第2次答申(平成26年6月13日付)厚生労働省医政局総務課事務連絡「医療機関におけるコンタクトレンズ等の医療機器やサプリメント等の食品の販売について」(平成26年8月28日付)、コンタクトレンズの販売に関する厚生労働省医政局総務課事務連絡「医療機関におけるコンタクトレンズ」(平成27年4月17日付)厚生労働省「医療法人の業務範囲」(平成30年3月30日現在))を読み解くと、 医療機関が「医業」の範囲内として物販を適法に行うための要件は、以下のようなものになると考えられます。

①特定の患者のために物販が行われること(インターネット等を用いて不特定多数人に対し物販することはできない。)
②「療養の向上」を目的として行われること
③病院等の施設内での販売であること


4. 結論

以上からすると、医療機関は、病院等の施設内の売店において患者の療養の向上に必要な範囲で物販を行うことは可能であるが(要は、医療機関が提供している治療に役立つ物であるなら販売可能ということ)インターネット等を通じて物販を行うことはできず、インターネット等を用いて物販を行うためには、医療機関とは無関係な別法人(株式会社)を設立し、当該別法人において物販を行う必要があるということになるでしょう。

厚生労働省「医療法人の業務範囲」(平成30年3月30日現在)が、医療法人による別法人への物販の委託を医療法人の付随業務の範囲外であるとしていることを踏まえますと、医療法人が別法人に物販のみを業務委託するという形態も、少なくとも行政上は望ましくないことになるでしょう。

このように考えると、医療機関による物販が法令上可能な範囲は、現時点ではかなり限定されていることになると思われますが、内閣府規制改革会議健康・医療ワーキング・グループ第17回会議(平成26年2月18日開催)においては、医療機関の付帯業務の範囲を拡大することについて示唆されているところです。実際に、いわゆるドクターズコスメのように医療関係者による物販行為の需要が増えてきていることに鑑みると、医療機関が行うことのできる物販の範囲については、今後、拡大される可能性があることから、今後の行政の動きを注視する必要があります。

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