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介護施設の事故

医療法人が経営する介護施設

少子高齢化の現在、総人口における65歳以上の人口の割合(高齢化率)は27.7%(平成30年高齢社会白書)、さらに、高齢者の要介護者等数も急速に増加しており、介護施設の担う役割は増大する一方です。その中で、近年、医療法人が経営する介護施設が注目を集めています。

医療法人も介護施設の経営が可能

医療法人が行うことができる事業の内容は医療法に規定がありますが、医療法人は、その本来的業務として介護老人保健施設を(医療法第39条柱書)、附帯業務として、老人福祉法に規定される有料老人ホームを経営することが認められています(同条第8号)。
人生100年時代を迎え、今後ますますの需要が見込まれる医療法人経営の介護施設ですが、介護施設では、介護施設ならではのリスクが伴います。以下、介護施設で生じる法的リスクについてご説明します。

事故が発生した場合の責任

介護施設で事故が発生してしまった場合であっても、そのすべてについて介護施設側が法的責任を負うわけではありません。
介護施設側が民事上の責任を問われることになる場合、その根拠となるのは主に債務不履行責任(民法415条)又は不法行為責任(民法709条)になるものと思われます。
債務不履行責任とは、債務の本旨に従う履行をしなかったことにつき問われる法的責任のことですが、介護施設の事故においては主に安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求がなされる場合が多いです。

不法行為責任

不法行為責任とは「故意または過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」場合に負うべき責任のことで、ここにいう「過失」の解釈が問題になりますが、過失とは「結果発生の予見可能性がありながら、結果発生を回避するために必要な措置を講じなかったこと」と定義されることが一般的です。
従って、そもそも事故が発生する予見可能性がない場合や、仮に措置を講じていたとしても結果を回避することができなかった場合には過失はないことになります。
たとえば、寝たきりでこれまで長期間自ら体勢を変えることがなかった入居者が何らかの理由で急に起き上がって設置していた転落防止柵を乗り越えて転落してけがをした場合などは過失がないと判断される可能性もあると思われます。
もちろん転落防止柵が外れやすくなっていたとか、巡回を全くしていなかった等の事情があれば過失ありと判断される可能性もあります。
仮に過失ありと判断されて、不法行為責任が問われる事態となった場合であっても、その賠償の範囲については直ちに決まるわけではなく賠償の範囲について争う余地はあります。

賠償すべき範囲を決定するにあたり

事故によって施設利用者が被った損害全体の中で、介護施設側が、賠償すべき範囲を決定するにあたっては、
①施設利用者側の過失および
②施設利用者側の素因(持病など事故の結果に影響及ぼしたもの)が考慮されます。
①施設利用者側の過失とは例えば、本来であれば介護施設側が把握しておくべきだった持病等を本人や家族が伝えていなかったために、適切な措置を講じることができなかった場合などが挙げられます。このように施設利用者側にも過失がある場合は、過失相殺がなされ賠償額が減額されることがあります。
②素因とは例えば、施設利用者が同年齢の平均に比べて著しく骨粗しょう症が進行しており、転倒の際に通常ではありえないような複雑骨折をして治療が長期化した場合などです。この場合、素因が考慮されて、賠償額が減額されることが考えられます。
このように、介護中に事故が起きたとしても、安全配慮義務違反の有無、過失の有無、賠償の範囲について争う余地は多くありますので、専門家に相談されることをお勧めします。

料金(税別)

【経済的利益が300万円までの場合】 着手金8%/報酬金16%
【経済的利益が300万円から3000万円まで】 着手金5%+9万円/報酬金10%+18万円
【経済的利益が3000万円から】 着手金3%+69万円/報酬金6%+138万円
  • ※顧問契約を締結いただいた場合には、事案の性質等によりまして、上記費用額から相当額の減額をさせていただきます。
  • ※お急ぎの場合、別途料金をお支払いいただく場合がございます。

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