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医療法関連コラム

いわゆる“ドクターズコスメ”の広告・販売に関する法律上の注意点

近年、テレビや雑誌等で“ドクターズコスメ”に関するニュースを耳にすることが多くなってきました。
美容に関心が高い方の間で話題となっているようです。
今回は、この“ドクターズコスメ”について、医療機関側の立場から見た法的問題点について説明したいと思います。

1.巷で話題の“ドクターズコスメ”に明確な定義付けはされていない

一般的は、ドクターズコスメとは、医師(例えば、皮膚科の専門医),医療機関が開発・監修・推薦に携わっている化粧品を指すことが多いように見受けられますが、現時点で、法律上の定義はありません。ただ、ドクターズコスメと銘打って販売されているものの多くは、化粧品または薬用化粧品であると思われます。
そこで、本コラムにおいては、まず薬用化粧品と化粧品はそれぞれどのようなものか、という点から話をしたいと思います。(以下、薬用化粧品と化粧品を併せて「化粧品等」といいます。)

2.薬用化粧品とは

薬用化粧品は、医薬部外品の一類型です。医薬部外品とは、医薬品と化粧品の中間に位置するもので、薬理作用があるけれども、医薬品に比べて人体に対する作用が緩やかなものをいいます(法律上の正確な定義は、薬機法2条2項に規定されております。)。
薬用化粧品の効能効果は、薬用化粧品の類型ごとに法令上限定されており、その内容は、『医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項について』(薬生監麻発0929第5号 平成29年9月29日)に定められています。例えば、薬用化粧品であるひげそり用剤ですと、①かみそりまけを防ぐ②皮膚を保護し、ひげをそりやすくする、といった限られた効能効果しか標榜することができません。

3.化粧品とは

化粧品の定義は、薬機法2条3項に規定があります。
そこでは、化粧品を「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに,第1項第2号又は第3号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。」と定義しています。
化粧品の効能効果も、薬用化粧品と同様に、法令上限定されており、その内容は、『医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項について』(薬生監麻発0929第5号 平成29年9月29日)に定められています。

4.化粧品等に医師が関与することに対する規制

薬機法66条2項は、「医薬部外品、化粧品・・・の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項(※)に該当するものとする。」としています。
ここでいうその他の者とは、医薬品等の効能、効果又は性能に関し、人々の認識に相当の影響を与える者のことを言い、歯科医師、薬剤師、(化粧品については)理容師、美容師等が含まれます。これらの者が、実際には効能効果を保証していないにも関わらず、あたかも保証したかのような広告をすると、虚偽・誇大広告となり、薬機法に違反することになります。
※虚偽・誇大広告のことです。

また、厚生労働省による『医薬品等適正広告基準』(医薬部外品、化粧品に関する広告を行う際に、読むことが必須の通達です。)は、「医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告は行わないものとする。」としており、医薬関係者が化粧品等の効能効果について「推薦等」を行うことは望ましくないとしています。
これは、医師等の専門家の権威を借りて広告を行った場合、効能効果について一般人の判断を誤らせる危険があるためです(なお、これに違反してもせいぜい「通達」に違反し望ましくないというに過ぎず、即座に薬機法という「法律」違反になるというわけではないことに注意が必要です。)。

5.医師の監修や医師との共同開発という標榜

「医師が開発段階から監修に関わっている、又は医師が共同開発しているといったことを化粧品等に標榜してよいか」というご相談を、当事務所では多く受けています。(実際に、ドクターズコスメと銘打って販売されているウェブサイトにおいて、化粧品等の開発監修者として医師の名称や顔写真が掲載されているものは多いです。)。
この点に関し、通達『医薬品等広告に係る適正な監視指導について(Q&A)』(事務連絡平成30年8月8日)では、化粧品等の広告につき、「大学との共同研究」と標榜することは、上記医薬品等適正広告基準における医薬関係者等による推薦等の禁止に抵触するとされています。
したがって、医師等による共同開発・監修といった表示も医薬品適正広告基準に抵触すると考えるのが妥当と思われます。

6.ドクターズコスメをどのように広告すればよいか

以上から、いわゆるドクターズコスメとして販売されている化粧品等の広告において医師による監修、共同開発といったことを標榜することは、医師による推薦にあたるとして通達『医薬品等適正広告基準』に違反していると考えることになると思われます。
もっとも、医師による化粧品等の推薦禁止は、薬機法という法律が直接禁止しているものではなく広告することが望ましくないというに過ぎません。医薬品等適正広告基準においても、そのことは明らかにされています。
また、医師が独自に化粧品等を開発し、販売すること自体は何ら禁止されていませんが(もっとも、医療機関による物販の方法については厳しい法令上の規制があり、その点については、別稿の『医療機関と物販』をご参照ください。)、その場合に、医師が開発したことを表示しないのは無理があるでしょう。
とはいえ、そのような場合であっても、医師が開発や監修をしていることで、他の商品より優れているとか、効能効果や安全性が確実であるとの誤解を生じさせないような広告をすることは、最低限求められていると言えるでしょう。

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