医師の離婚・相続・信託
医師の離婚で問題となる財産分与
医師が離婚する際には、特に財産分与に関する問題が重要な争点となることが少なくありません。
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が共同で形成した財産を、離婚時に公平に分け合う制度を指し、原則として夫婦双方が取得した財産の合計を2分の1ずつ分けることが基本的な考え方とされています。これは、婚姻生活において財産形成に寄与した程度が必ずしも収入の多寡に比例するわけではなく、夫婦の協力の下に蓄積されたものであるという前提に基づいています。
しかしながら、財産の蓄積が主として一方の高度な専門性や経営手腕に起因する場合、形式的に2分の1に按分することがかえって不公平となる場合があります。
実際の裁判例においても、医師である夫が病院を経営し、夫婦の総財産が約1億円に上った事案において、妻に対する財産分与が全体の5分の1にあたる約2000万円にとどまったケースがあります。これは、医師という高度な専門資格や職業上の能力が財産形成に決定的に寄与した点が重視された結果であり、2分の1の分与では不公平になると判断されたものです。
同様に、医師が医療法人を経営している場合など、その才覚や努力が財産形成に大きく関与していると認められる場合には、通常の離婚事案よりも有利な財産分与結果が得られる可能性があります。
このように、医師の離婚における財産分与は、一般的な事案とは異なる考慮要素があるため、専門的な視点から慎重に対応する必要があります。
医療法人に対する出資持分の払戻請求をする場合も
また、医師の離婚における財産分与で問題になるものに医療法人に対する出資持分の払戻請求をする場合があります。
夫婦どちらかが医療法人の持分を持っているケースでは、財産分与に際し、出資持分が夫婦共有財産にあたるのか、出資持分の財産的価値をどのように評価するのかなどについて、激しく争うことになる場合があるからです。
過去の例として、相手方が財産分与に関して、医療法人の持分を金銭で評価した額を請求してきたことがあります。
医療法人を設立した際の出資額の半分を渡せばいいのではないかと思われるかもしれませんが、実はそうではありません。
財産分与の対象となるのは、社員が出資した際の出資額ではなく、離婚が決まった時点(正確にいうと、調停成立時又は口頭弁論終結時)における医療機関の時価総額に出資割合を乗じた額となってしまうため、医療機関の時価総額が離婚時に上がっていると出資持分の払戻金額が高額になり結果として、離婚交渉そのものが進まなくなってしまうからです。
当事務所は、事前に様々な対策を行うことにより、このような案件についても適切に解決することができる知識、経験があります。詳しくお知りになりたい方は当事務所までご連絡ください。
医師の家督相続で問題となる資産承継
元院長である父が、所有しているマンションとマンション内のクリニックを、後を継いだばかりである息子の現院長に譲るような場合、マンションやクリニックを贈与すると多額の贈与税を息子が負担することになりかねません。
このような場合、信託契約を用い、元院長を委託者、現院長を受託者としてマンションやクリニックの管理をさせ、元院長を受益者として賃料等の利益を得られるようにすれば、現院長が贈与税を負担することなく、マンションやクリニックを譲り受けることが可能です。また、元院長である父が、そのマンションやクリニックを現院長から現院長の息子(元院長の孫)に引き継がせ、現院長の妻には関与させたくないような場合、単純に相続させてしまうと現院長の妻もマンションやクリニックに対して共有持分を取得することになってしまい、元院長の望みは叶いません。
このような場合、信託を用い、第二受益者を現院長、第三受益者を現院長の息子(元院長の孫)とすることにより、マンションやクリニックを息子や孫に引き継がせることが可能となります。
このように、医師の家督相続が問題となる場面においては、信託を利用することにより、スムーズな家督相続が可能となる場合があります。
当事務所では、離婚問題解決、信託問題解決にも注力しており、解決事例も多数ございますので、是非ご相談にいらして下さい。