Marunouchi Soleil Law Office
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弁護士による病院・クリニックのための法律相談

Consultation / Solution cases相談・解決事例

夫婦関係の悪化をきっかけに、医療法人の理事・社員から外されてしまった事例

事案の概要

夫婦関係の悪化をきっかけに理事長である夫が医療法人の理事・社員である妻を理事・社員の地位から妻に無断で外してしまい、それが紛争に発展するケースがあります。
医療法人において妻が理事・社員の地位についていることは珍しくないため、様々な規模の医療法人で発生する問題です。

弁護士への依頼背景

別居をきっかけに何の理由の報告・説明もなく(社員総会の招集通知も出されていませんでした。)、妻が理事・社員を外されたことに納得がいかず弁護士に依頼をしました。

弁護士のサポート内容

訴訟対応

解決までの流れ

社員総会不存在確認訴訟、理事・社員の地位確認訴訟、未払役員報酬支払請求訴訟等を提起しました(このように複数の請求を行う場合、各請求につき訴えの利益が認められるか否かも事前に検討しておくべきです。)。

妻を社員・理事から外した手続きが適法であったかどうかの主張・立証をします。
社員総会が実際に開催されていたか、開催されていたとして出席していた社員が適法に選任された社員であったか、招集手続きに不備がないか、社員総会が実際には開催されていなくても事後的に追認されていたかどうか等を争います。

具体的には、招集通知、過去の手帳、LINEにおけるやり取り等の証拠から社員総会の不開催の事実や社員による事後的な追認の不存在を主張立証していくことになります。
また、社員の除名に関しては、定款に記載されているであろう除名事由が存在したか否かを事実関係の調査により確認します。
更に、理事の解任に関しては、妻側に解任されなければならないほどの落ち度(解任の正当理由)があったかどうかの検証も行っていきます(これによって、妻側に別途損害賠償請求が可能となる場合があるからです。)。

解決のポイント

株式会社における株主総会の指導の経験、医療法人における社員総会の指導の経験、医療法人の設立手続きを行った経験が複数あったため、社員総会の記録がどのように保存されているか、都道府県や法務局にどのような議事録が存在し、どこまでが開示されるか(開示されない箇所は黒塗りで開示されます。)は把握していました。
したがって、必要な資料を都道府県への情報開示請求、法務局での閲覧、依頼者による早期提出、といった手段により取得のうえ分析し、こちらに有利な決定的な証拠を抽出できたことです。
社員総会議事録が存在したとしても、他の事実や証拠から議事録記載の社員総会が実際には開催されていないことを立証することは可能であり、本件が正にそれに成功した事案です。

本件のような事案は、離婚訴訟、婚姻費用分担調停、面会交流調停等とも複雑に絡み合っていることも多く、それらの関連性・バランスが非常に重要になってきます(更にいうなら当事者の感情的な対立もかなり激しいうえ、いわゆるDVがあるケースもあることから、それらの点にも留意する必要があります。)。

たとえば、離婚の財産分与との関係では、医療法人が出資持分あり医療法人である場合、その出資持分を夫と妻がどのように分与するのか、という点も関連してくるので、離婚訴訟の帰趨も見据えた上で案件を進めることになります(場合によっては、そのあたりを理由に複数の案件を一括解決するための和解交渉を試みることもあります。)。

離婚・医療両分野の訴訟・調停・審判を複数経験していたため、それらの経験を基に案件に対処できたように思えます。
とはいえ、非常に難易度の高い分野であると思っており、対応には細心の注意が必要です。

事案総評

本件においては、社員総会議事録が存在したにも関わらず、結論として、社員の除名、理事の解任を行ったとされる社員総会を不存在とする判決が出されました。その結果、妻側に社員・理事の地位が認められ、理事を解任された以降の理事報酬相当額についても支払いが認められました。
こういった案件においては、早期に弁護士に相談のうえ、早期対応することが非常に重要になってきます。問題が起きてから時間が経ってしまうと、その間、医療法人の経営権が失われてします可能性もあるからです。

医療法人の設立の段階における定款の作り方、社員の選定、社員や理事を追加した際における社員・役員名簿の変更の有無、社員総会議事録の有無あたりが非常に重要です(実務上、この点を重視し、完璧に行っている医療法人は必ずしも多くないように思います。)。

また、医療法人の理事や監事に弁護士や税理士といった専門職を入れておき、定時社員総会の開催等を行い、議事録を作成・保管することも紛争予防の観点からは重要でしょう。特に、社員総会の過半数(理想的には3分の2)をどのような人物を社員にすることによって押さえるかは、医療法人の運営にとって極めて重要なので、人選には万全を期すべきです。

これから医療法人(又は一般社団法人)設立を考えている方は、設立時からそういった視点を持っていただければと思います。また、すでに医療法人(一般社団法人)を設立をされている場合においても社員を入社、ないし退社させる際には慎重に決定する必要がありますでその点についても専門家の意見も取り入れた上で、慎重に判断すべきと思います。

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