介護施設の事故

高齢化とともに介護施設の役割も増大

少子高齢化の現在、総人口における65歳以上の人口の割合(高齢化率)は26.7%(平成28年高齢社会白書)、さらに、高齢者の要介護者等数も急速に増加しており、介護施設の担う役割は増大する一方です。

そのような環境の中で、日々介護業務に取り組んでいる介護施設では事故発生のリスクが付きまといます。


事故が発生した場合の責任

介護施設で事故が発生してしまった場合であっても、そのすべてについて介護施設側が法的責任を負うわけではありません。介護施設側が民事上の責任を問われることになる場合、その根拠となるのは主に不法行為責任(民法709条)になるものと思われます。

不法行為責任とは「故意または過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」場合に負うべき責任のことで、ここにいう「過失」の解釈が問題になりますが、過失とは「結果発生の予見可能性がありながら、結果発生を回避するために必要な措置を講じなかったこと」と定義されることが一般的です。

従って、そもそも事故が発生する予見可能性がない場合や、仮に措置を講じていたとしても結果を回避することができなかった場合には過失はないことになります。

たとえば、寝たきりでこれまで長期間自ら体勢を変えることがなかった入居者が何らかの理由で急に起き上がって設置していた転落防止柵を乗り越えて転落してけがをした場合などは過失がないと判断される可能性もあると思われます。

もちろん転落防止柵が外れやすくなっていたとか、巡回を全くしていなかった等の事情があれば過失ありと判断される可能性もあります。

仮に過失ありと判断されて、不法行為責任が問われる事態となった場合であっても、その賠償の範囲については直ちに決まるわけではありません。


事故の責任の有無や賠償の範囲について争う余地はある

事故によって施設利用者が被った損害全体の中で、介護施設側が、賠償すべき範囲を決定するにあたっては、①施設利用者側の過失および②施設利用者側の素因(持病など事故の結果に影響及ぼしたもの)が考慮されます。

①施設利用者側の過失とは例えば、本来であれば介護施設側が把握しておくべきだった持病等を本人や家族が伝えていなかったために、適切な措置を講じることができなかった場合などが挙げられます。このように施設利用者側にも過失がある場合は、過失相殺がなされ賠償額が減額されることがあります。

②素因とは例えば、施設利用者が同年齢の平均に比べて著しく骨粗しょう症が進行しており、転倒の際に通常ではありえないような複雑骨折をして治療が長期化した場合などです。この場合、素因が考慮されて、賠償額が減額されることが考えられます。

このように、介護中に事故が起きたとしても、責任の有無、賠償の範囲について争う余地は多くありますので、専門家に相談されることをお勧めします。