医療事故・過誤への対応

医療事故・医療過誤

医療事故と医療過誤の違い

医療事故や医療過誤という言葉を、よく耳にされると思います。
この二つの用語は混同されがちですが、明確に区別されています。

まず、医療事故とは、医療の現場、全過程で起きる全ての人身事故のことをいい、過失の有無は問われません。被害者も患者さんに限定されず、医療従事者が被害を受ける場合も含みます。

一方、医療過誤は、誤診や誤った治療、誤った薬剤の投与など医療上の過失によって患者に傷害・死亡などの損害を与えることをいい、医療事故の一類型という位置付けです。 医療過誤が認められると、医療従事者は大きく分けて、「民事」「刑事」「行政」上での責任を問われる可能性が出てきます。


医療過誤が認められた場合の民事上の責任

まず、民事上の責任についてです。一般的に医療過誤を起こした医療従事者本人は不法行為責任(民法709条)を問われることが多いですが、医療施設の開設者は患者さんとの診療契約に基づく債務不履行責任(民法415条)を問われる可能性があります。
なお、医療施設の開設者は直接の過失の主体でなくても使用者責任(民法715条1項本文)という形で不法行為責任を問われることもあります。

医療過誤に関する民事上の責任について争う主な方法は以下の通りです。
  • 任意の話し合い
  • 医療ADR(医療裁判外紛争解決)
  • 調停
  • 訴訟
医療ADRは、弁護士会が行う裁判外での紛争解決手段です。東京三会で実施される医療ADRでは患者側代理人と医療機関側代理人の双方に、経験豊富な弁護士が仲裁委員として選任されます。医療紛争は専門性が高いため、より適切に解決できるよう工夫されています。
この手続きは患者側のみならず、医療機関の側から患者さんとの調整などを目的として申し立てることもでき、裁判・調停に比べて柔軟かつ迅速に期日が設定されます。


刑事上、行政上の責任

次に、刑事上の責任ですが、医療過誤が認められる中でも特に悪質と判断された場合には、業務上過失致死傷罪(刑法211条)に問われる可能性があります。しかしながら、実際のところケースとしてはかなり少ないのが実情です。
最後に行政上の責任ですが、医療過誤によって刑事上の責任を問われ、罰金以上の刑に処せられた場合、移動審議会にかけられた上で、戒告、医業停止、免許取消等の処分を受ける可能性があります。
なお、看護師の場合も罰金以上の刑に処せられた場合には、業務停止や免許取消の行政処分を受ける可能性があります。

このように、医療過誤が起きた場合には、患者さんから損害賠償を請求されたり、あるいは、警察や検察による捜査が開始されたりなど、さまざまな事案が発生する可能性があります。専門性の高い分野でもあり、このような事態に適切に対処するためにも、弁護士に相談・依頼して対策を講じる方が安心です。